2017.11.27 第6話

PARCOよりジャガイモ

VISIONのメンバーはみな優秀だった。特にディレクターのU田さんの才能は突出していたように思う。「どうしてこんなことが思いつくのか?」発想力、考え出す力、アイディアを導き出すための道筋の作り方は〝彼独自のもの〟なのだと〝当時〟は思っていた。当時は、、、。
 
こんなエピソードを聞いたことがあった。彼は美大卒業後東京の広告プロダクションにディレクターとして勤務していた。メインクライアントは大手製薬会社、華やかな仕事だったと思う。7〜8年経ち、何がきっかけかは詳しくは聞いてないが、旭川に戻る決意をして、PARCOの広告制作室に勤務していた先輩に相談しに行ったという。
 
その頃のPARCOは(今でもか?)この仕事をする者にとっては、花形中の花形だ。山口はるみがエアブラシで「はるみギャルズ」なる欧米風の女性イラストを描き、B倍ポスターにはキャッチコピー1本にPARCOのロゴのみ。地下鉄の通路には100枚単位で連貼りされる。
 
ま〜、バブル真っ只中の話。その先輩はこう言ったそうだ。「北海道旭川かぁ〜。いいな〜。Uさん、かっこいいよ!PARCOのポスター作ってるよりジャガイモのパッケージ作る方がずっとかっこいいじゃ〜ん!」
 
PARCOがどうということではなく。デザイナーとしてどこでどのような仕事をしていくかは、周りではなくその個人が価値を決めて行くこと。東京のファッションビルのポスターを作るも、自分の地元の自慢の食材を精一杯応援して行く仕事も当然優劣はなく、いかに1デザイナーとして意味と価値を見出してゆくのか?そのことに目を向けたU田さんがかっこいいと言いたかったのだろう。
 
VISIONでは3年間U田さんと仕事をした。後、彼がVISIOを退社して独立。僕らの上に彼がいなくなった当初は戸惑いながら「U田さんだったら、、、」と考えることもあったが、彼が在籍中に口にしていた「田中君らしいものが見たい。」という言葉を思い出すにつれ、「自分はこのテーマをどう感じ、何を思うのか。背景に何があり、どのようになっていって欲しいのか。それはなぜか。」いつしか、「自分自身の考え出す道筋の作り方(田中君らしさ)」を教わっていたことに気がついた。今さらながら、U田さんに感謝。
 
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