2018.10.1 第50話

アメリカ出張。

「たなか!アメリカに行ってらっしゃい!」突然の出張命令だった。前職場で、アメリカの木材を使い始めて、3年ほど経っていた頃だ。
 
思えば、今現在の物の見方や考え方に、3度の海外出張での経験が大きく影響していることは確かだと思う。アメリカ、ロシア、そして北欧だ。ロシアは、38話で少し触れたので、今回はアメリカで感じたことを少し。
 
自社では無垢材で植物オイル仕上げの家具を作っていた。ホゾ組みという昔ながらの工法で、一人の職人がひとつの家具を仕上げていた。北海道産のイタヤ楓とロシアカラマツ。楓は白く清潔感があり、カラマツは黄身がかった薄茶。どちらも「木」らしいナチュラルな色と風合いだ。他社がまだ木にウレタン塗装で色をつけていた頃で、自社は木本来のそのままの色でもっと深い色合いの「木」を求めていた。アメリカンブラックチェリーとアメリカンブラックウォルナット。計画伐採されている森林からの木材と聞いていた。
 
来季以降の輸入に向けての「現地視察」。社長と木材会社の輸入担当者に同行させてもらった。木材の現地視察が主目的ではあったが、国際的なファニチャーショとワイナリーの視察?ナイアガラも行程に入っていた。
 
シアトル・タコマ国際空港に着いて、最初に飛び込んできたのが、強烈な「アメリカの匂い」。これは、アメリカ滞在中、ずっ〜と感じるのだが、香辛料なのか?牛なのか?いわゆる「アメリカンステーキ」の匂いなのだ。どこに行ってもどの料理を頼んでも、この匂いに満ちていた。ちなみにロシアに行った時に感じたのは、同じように「ボルシチ」の匂いだ。その国にはその国の匂いがあるらしい。
 
シアトル→サンフランシスコ→ミネアポリス→オマハ→ハイポイント→クリーブランド→バッファロー→デトロイト。まさにアメリカ縦横断、これを8日で廻る。移動→視察→夕食→宿泊→明朝移動の繰り返しだ。木材、住宅、インテリア、雑貨、生活様式、、、ハイウェイ。どれも新鮮なのだが、、、、。
 
片側4車線のハイウェイに大きくカーブしているところがあった。運転してくれたアメリカ在住の日本人ガイドが「アメリカ穴熊の生息地だったので、道路を迂回させた。」と。自然保護を強調していたが、その先の着いたショッピングモールでのレストランは、プラスティックの食器とカトラリーが全て使い捨てだった。
 
オマハで赴いた木材会社。アメリカ全土の「ウォルナット」を集めているとのこと。自社事務所の壁も床も棚も全て無垢のウォルナットだった。工場内、倉庫、乾燥庫、どこにもウォルナット以外の木は見当たらない。ここまで特化するのだ!と。
 
アメリカで訪れた街はどこも禁煙だった。が、一都市だけ、ハイポイントのファニチャーショー。会場の周りの路地は吸い殻だらけ、会場内もそこらじゅう喫煙者でモクモクしていた。
 
色々なことが矛盾しているように感じた。
 
クリーブランドの郊外、新興住宅地。アメリカらしい大きな車庫付きの瀟洒な建物。オープンハウスをしていたので見学させてもらったのだが、ほとんどが新建材で、壁厚もあまりにも薄く、「大丈夫なのか?」と心配になるほどだった。
 
説明を聞くと、「現在、銀行が低所得者向けの住宅ローンをどんどん進めている」と。2000年の春。リーマンショックの7年前だった。
今のアメリカは大丈夫なのか?
 
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