2017.10.30 第2話

チャップリンのモダンタイムス

デザインの道に進むことを決意したが、美術大学を受ける準備はまったくしてない。当時(40〜50年前)美術系の大学に進むには、高校に入学すると同時か入学前から石膏デッサンはじめ、美大受験のための「塾」に通うのが常識だった。僕は漠然と父親のいう「法学系」なのかな〜と。いや、そこも考えていなかったというのが正直な所なのだからまったく間に合わない。ダメなのだ。
 
その頃、意匠家と呼ばれていた人たちが「デザイナー」と呼ばれるようになり、東京にもデザイン専門学校が幾つも出来ていた。その中の一校を受験することにした。〝作品提出〟で入学の是非を選考してもらうのだ。まあほぼほぼ全員入学するのだけれど。
 
浪人時代、多くの人がそうであるように?古い映画をよく観た。「何本だて=000円」ってやつだ。気に入っていた映画は何本かあったが「チャップリンのモダンタイムス」もそのひとつだった。機械文明に支配されてしまった「人間たち」を儚くも悲しく笑いに満ちて表現されていた。観衆は笑いながらも涙がこぼれている。ひょうひょうとした表情の弱き?チャップリンの強烈な社会風刺。資本主義と産業革命に対しての問題提起なのだ。これを作品のテーマにしてみようかな。
 
20数年後、同僚の結婚式の司会を任され、照れくささに、髭に蝶ネクタイ、フェルトハットを冠って「はい!司会のチャーリーで〜す。」チャップリンを意識した訳ではなかったのですが、潜在的記憶の中に残っていたのかもしれない。
 
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